news

ベルリン国際映画祭 オフィシャルレポート!

2018.02.16

日本では2月16日封切の行定勲監督の新作『リバーズ・エッジ』。
ベルリン国際映画祭の才能ある監督の意欲作や新作を集めたパノラマ部門のオープニング作に選ばれ、世界中の映画関係者が一同に介するベルリナーレ・パラスト劇場のレッド・カーペットを、監督と主演の二階堂ふみ、吉沢亮の3人が歩き映画祭に華を添えた。行定監督にとっては5回目のベルリン上映作だ。

「ベルリンが選んでくれる僕の映画は、いつも青春映画だ。だからこの映画を作っているときも、またベルリン(映画祭)に行けたらいいな、という思いは胸を横切りました。ただそれが現実になろうとは想像していなかったので、今年はパノラマ部門のオープニングに選んでもらえて光栄です」と取材をうけたドイツの媒体に語った。

『リバーズ・エッジ』は1994年に岡崎京子さんが描いた漫画が原作だ。
「僕は漫画の映画化はしたくないと思っていました。視覚的にイメージが出来上がった漫画を映画にすることで、読者の期待を破壊したくなかったら。『リバーズ・エッジ』を映画化する気になったのは、岡崎京子さんは台詞にこだわり文学的な作品を書く人だから。この漫画は94年以後の多くの文化人に大きな影響を与えた作品だと思う」と初の漫画原作映画化の動機を聞かれ、会場満席の観客にその理由を打ち明けた。

パノラマ部門のオープニング作品として、ベルリン時間15日の9時からシネマックスという劇場の4つのスクリーンで同時上映され、全劇場とも満席、1200人近い観客が鑑賞した。上映後には観客との質疑応答が設けられ、監督、二階堂、吉沢の3人がそれに対応した。
映画の設定は1994年ということだが、見ていて現代でもおかしくない話だと感じた、というコメントに対し監督は、
「1994年僕は20代半ば、青春の真っただ中だった。僕はこれまで未来について考える映画を多く作ってきたが、本作は過去を振り返っている。この映画は若いキャストである二階堂さんと吉沢君を起用することで、映画にリアリティが出でたと思う」と語った。
ベルリンに何度も参加している監督が、日本で映画を作っていて感じる現状とは、「最近は若者にわかりやすく、簡単に共感しやすい、安易な日本映画が主流になっている。この映画の背景である90年代、日本人は政治や社会問題に無関心だった。現実を無視した時代だった。ある意味現代の現実もそれに似ているかもしれない。あまりに何もかもが説明され、多くの選択肢が与えられたせいで、多くの若者は自分で考えることに逆に無関心になってしまっている。だから僕の映画は若い人に考えてもらう映画なんです」とも語った。
主人公の若草さんを演じる二階堂さん。「日本ではこのキャラクターの中には大きな空白、無があるという風なご指摘をもらいました。ところがベルリンでは、怒りや強さを秘めた女性のように映ると言われ、同じキャラクターを違った視線で見てもらえたことが驚きででしたし面白いとも思った」と語った。また吉沢亮は、「僕にとって今回が初めての映画祭。真剣な雰囲気かと想像していたのに、会場で皆が本当に楽しそうに映画を見ている。町中に映画が溢れている感じで感激した」と嬉しそうに語った。

光沢ある黄緑色のリバーシブル・ドレスを美しく着こなした二階堂さんと髪を明るく染めた吉沢さんは、ふたりとも、舞台挨拶は自力英語でこなした。上映終了後はファンにサインをしたり、スナップ写真に一緒に収まったり、交友する光景も見受けられた。
『リバーズ・エッジ』はカギッ子や、虐め、ひきこもり、学校内暴力、会話のない親子や家族の崩壊など、日本人にとっては常識的な厳しい現実がちりばめられているが、それをどこまで海外の人々が認識し理解しているのか、興味が沸く。ベルリン映画祭だからこそ、この映画の価値、意味を高く評価してくれたのだと思う。岡崎京子さんの原作が日本で94年に与えた衝撃を、20余年後映画として世界的なレベルでどこまで伝播できるか、楽しみだ。
(レポート:高野裕子)

みんなのコメント